篠山市の金出武雄さん(70歳)が、京都賞を受賞されることが決定しました。
授賞式は11月10日です。
京都賞は科学や文明の発展、また人類の精神的深化、高揚に著しく貢献した人々を讃える国際賞です。今年は日本人が2人、アメリカ人が1人です。何ともすごく、すばらしい賞で、ノーベル賞受賞者の山中伸弥教授も、以前受賞されています。
金出さんのことは、この市長日記2014年12月22日「世界のロボット博士が篠山市民に!」(http://www.city.sasayama.hyogo.jp/pc/mayor/diary/post-716.html)で記載しました。
丹波市の春日町で出生され、小学校1年生で神戸に、京都大学助教授からアメリカのカーネギーメロン大学などで教授を務められ、ロボット工学の世界の第一人者です。
篠山市でのお住まいが、大変気に入っておられます。
「町が美しく、自然や文化に富んでいる。ヨーロッパは看板や高さ規制などで美しい。丹波篠山やデカンショをもっと若い人にもPRしてほしい。」
また、「素人のように自由で素直に発想し、それを玄人的なやり方で実現すること。」と話されました。これは役所の仕事にも通じることで、役所は往々にしてこれが逆になり、できない理屈ばかりが先に出てきてしまうのです。
篠山市民として本当に嬉しいことで、市民や子ども達にお話をしていただく機会を是非つくってほしいとお願いしました。
なお、金出博士のご功績は私には難しく、次のとおりです。
第32回(2016)京都賞先端技術部門受賞者 業績
授賞対象分野:情報科学
金出 武雄 博士
コンピュータビジョンとロボティクス分野での先駆的かつ実践的研究
金出武雄博士は、コンピュータビジョンの基礎的な理論からロボティクスへの応用まで、長きにわたり幅広く活躍してきた。今日、知的視覚機能を備えたカメラやロボットが様々な社会的問題を解決するものと期待されているが、これらの技術の基礎および実装で傑出した先駆的な貢献を行った。
金出博士はコンピュータによる画像認識研究の先駆的研究に取り組み、ニューラルネットワークによる学習に基づく顔検出手法を提案した。この手法は顔検出率を飛躍的に向上させて、実用的利用が可能なレベルにまで押し上げ、その後の改良により数多くの商用化がなされるに至っている。
カーネギーメロン大学に移ってから、動画像による外界の立体構造と運動を認識する問題に取り組み、物体の動きを表すオプティカルフローの推定の基礎となる頑健なアルゴリズムを提案した。この方法はLucas-Kanade法と命名され、今日の映像処理において必須の基本的な手法となっている。加えて、物体の動きから3次元形状を復元する問題に対し特異値分解に基づくノイズに強い3次元復元法(Tomasi-Kanade分解)を提案している。これにより、映像からの3次元復元手法にかかわる多くの関連研究が生まれ、画像から対象とする世界を認識する研究が大きく進展した。こうした基本的貢献に基づいて、視覚情報処理を実世界で役に立つ形で実現している。
特に注目すべきは、自動運転の研究である。1985年から始まった自動走行車のプロジェクトは、昨今の自動運転技術のさきがけとなった。車に設置した距離センサとカメラからの情報に基づいて、レーンの認識、レーン変更、障害物検出と回避、他の車両検出などをリアルタイムで行う人工知能システムを世界で初めて構築した。その成果を実証するために“No Hands Across America”という壮大なデモンストレーションを行った(1995年)。これはアメリカ大陸をハンドル操作なく横断するもので、アメリカ東部のピッツバーグから西海岸のサンディエゴまでの約4,500kmをほとんどハンドルから手を放して走行するという画期的な成果を残した。このデモンストレーションが自動運転の実現に道筋をつけた意義は大きい。
さらに、多数のカメラを用いた実時間での3次元再構成、生活の質向上に関連する実用的なデジタルヒューマン研究などがある。一筆に値するのが、フィールドを取り囲むようにスタジアムに設置した33台のロボットカメラをリアルタイムで協調制御してボールを持った選手を追跡撮影するシステム(EyeVision)である。アメリカで最も視聴率の高いスーパーボウル(アメリカンフットボールの試合)において、このシステムがテレビ放送の新たな映像表現を提示し、視聴者を驚かせた。
このように金出博士の業績は、学術的な基礎研究から実用的な研究まで広い分野にわたっており、画像処理、パターン認識の分野において、基礎的、理論的な枠組みを提唱するとともに、そこから壮大な実用技術の開発を成し遂げたという点で傑出している。